book
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「書籍をつくらせていただけませんか?」
と連絡をくれたのは、以前取材でお世話になった編集者さんでした。
「わあ!なんて光栄な!ぜひぜひ!たのしみでワクワクします!」
とお返事して本づくりが始まったのは
まだコートを羽織ってストールをグルグルと首に巻き付けていた、冬の真ん中あたりの季節でした。
制作の日々のなかで
取材を重ねていただき、どんな本をつくろうか、
みんなのイメージを織り交ぜ
何度も意見を交換しながら
真っ白な紙のなかに
形をつくり、色合いをもたせ、
すこし離れてみたり
ぐっと潜ってみたり
大切に、大切に、
ずっと自分のなかに置いて過ごした一年間
なんだか、
愛情たっぷりに大切に育てた
生き物のような一冊が
できあがりました。
書籍のタイトルは
ひとつずつの色
ひとつずつの形
ひとつずつの生き方
です。
書籍づくりが進む中で
「本につける名前、なにかアイデアございますか?」
と、編集者さんに質問いただき
思いの外、すぐにパッと浮かんだ
この言葉。
わたしたちが衣服制作を続けてきたなかで
はじめから、ずっと心の真ん中に置いている
大切な意識です。
ezuの前身であるリップル洋品店として活動を始めたころは
わたしたち家族は社会のなかで
どう生きていこうかを
いろいろと悩んでいる時期でした。
模索する日々の中、
ひとり、ひとり、が
その人らしく
いきいきと生きる世界に希望を抱いていました。
衣服制作をとおして、
そんな想いを伝えていけたら、、、
とリップル洋品店を始めました。
ひとつずつの色、ひとつずつの形、
つくりだす衣服は、すべてバラバラ
でも、
完成する色と形はそれぞれに美しく
赤の中でも
はじめの赤と次の赤、違っていても間違いじゃない。
青の中でも
きょうの青、次の日の青、違っていても
どちらも美しい。
そしてバラバラなそれらを
それぞれに気に入って巡り会ってくれる人たちが
ちゃんと、いてくれて
ひとつずつの色と形をした一着、一着が
ひとり、ひとりに選ばれていくたびに
救われる気持ちになりました。
おなじじゃなくても、いいんだよ、と
言ってもらっているようで。
バラバラな衣服を手にとってくれたひとたちが
感じさせてくれた
この、ありがたい気持ちを
どこかでおなじような想いを抱えて
困っているひとたちに
制作をとおして伝えていきたい
感謝を循環させていけたらと
想いながら制作を続けてきました。
わたしたちが制作を続けてゆく限りは
日々、一着、一着の
ひとつずつの衣服がうまれ続け
世の中に、
ひとつずつのバラバラな衣服が渡り続ける
イロトリドリな世界を
ながい歳月をかけてつくりあげてゆく
大きな作品群のように
思想を込めて制作していこう、と、
リップル洋品店を始めたころの想いを
思い出します。
人がひとり、ひとり違うように、
違っていいように、
衣服の色と形も、ひとつずつ違う洋品店が
あってもいいよね、
そんな生き方が、
あってもいいよね、と。
ひとつずつの色
ひとつずつの形
ひとつずつの生き方
ちょっと長いタイトルをつけた
120ページほどの一冊。
ひらいてもらえたら
そしてそれぞれに感じてもらえたら
想いを込めて。