かのこ編みセーター

おばあちゃんとの写真

トヨコばあちゃんは、私の祖母。
90歳です。

私がセーターを作りたいと思ったのは、祖母の大切にしてきたコレクションがきっかけでした。

戦後、街にできた縫製工場で働き始めた祖母が、初めて貰ったお給料で買ったものは手編みのセーターでした。

近くにあった毛糸屋さんで毛糸を選んで編んでもらったというそのセーターは、本当に美しく、シンプルなデザインと着やすいサイズ、そして祖母と長年過ごしてきた家族のようにくったりと馴染み、愛おしい姿かたちをしていました。

祖母はそんなセーターを沢山持っています。その数50着ほど。お給料を貰うと毛糸屋さんに行きセーターを頼む。それが祖母の一番の楽しみだったそうです。

思い起こせば、わたしが幼い頃から祖母はいつもセーターでした。夏は綿、冬は毛糸、、半袖、長袖、いつもセーターでした。歳を重ねるごとに、

「あぁ…わたしもセーターを作りたいなぁ…rippleの色で並べたいなぁ…」

と思うようになり。。。 試行錯誤すること一年半。
沢山の人達の協力のもと、rippleのオリジナルセーターが出来上がりました。

祖母のセーターコレクションの中からヒントをもらい、形を作りました。編み柄は祖母の大好きな鹿の子編み。色は色とりどりに手染めをしました。受け継がれるものを作りたい。

誰かの暮らしにくったりと馴染む、
誰かの記憶に静かに残る、
誰かの気持ちがそっと撫でられるような、

そんな一着が作りたい。想いが形になったセーターはわたしと祖母の、大切な記憶の記録です。きょう、出来たての染めたてを持って祖母の家に行きました。

「いいセーターができたねぇ、綺麗な色だねぇ」とほめてもらって、すごく嬉しかった。

「くみちゃんとおそろいだね、おばあちゃんとくみちゃんは仲良しだもんね」
と。

私のものづくりのアイデンティティは、ここにあるのだと思う。

格好良いとか、オシャレとか、流行とか、ではなく、ここにあるのだと思うとなんだかとても嬉しくてたまらなくなった。私もこのセーターを70歳になっても80歳になっても、大切に着たいと思います。

そしてezuで手にとっていただける誰かにとっても、そんな一着になってくれたら幸いです。

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